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2007/08/25 (Sat) アンダーグラウンド

 
 
『アンダーグラウンド』

村上春樹 著
 
 
 

 
オウムが起こした、地下鉄サリン事件の被害者や関係者
60人ほどのインタビュー。

圧倒的な暴力の被害を受けて、死ぬほどの目にあった方、
後遺症に苦しむ方、家族を亡くされてしまった方。

事件が起きた現場では、公的機関の救助活動の不手際が目立つ中、
被害者同士で助け合って、道路で一般車を呼び止めて
病院へ搬送したりしていたようです。

個人的に興味深かったのが、
その時点ではそれがサリンだと判らなかったわけですが、
たくさんの人が、ガスを浴びて身体の不調を感じながらも、とりあえず会社や仕事場に向かったこと。
国民性なんじゃないかと、思いました。

オウムに対して、怒りや憎しみを激しく持っている人と
あまり憎しみも怒りもない人に分かれているのも、考えさせられました。
憎しみも怒りもない人は、もともとそういうものに頓着しない場合と、
そういう感情を消化して事件を相対化していった人、がいたようです。

また、死と隣り合わせの経験をして、自分の人生を見つめなおすことができた、
と仰っている方が複数いたのも、人の生きる力を垣間見ることのできるものでした。


わたしが一番、強く感じたのは、
「思想」という形のないものに、人間の行動が操られることの怖さ。
改めて、驚きでもありました。
サリンをまいた実行犯は、地下鉄に乗って、傘の先でサリンの入ったビニール袋を突くという一連の行為の間、
誰かに見張られて脅されていたわけでも、ピストルを突きつけられて「やれ」と言われてやったわけでも、なかったんですよね。
途中で逃げ出すことも、物理的には可能だったはずです。

しかし実際には、自我を乗っ取られてその行動を操られて
多大な被害者を出す事件は「起きました」。
もしもあの時…、ということは無限に考えられるけれど、
実際に起きたことは最悪のことでした。

断ることもできたのではないですか?という麻原弁護団に、実行犯のひとりは答えていました。
「断ることができたなら、この事件は起きなかったのではないでしょうか」と。


ヒトは、本来なら助け合うべき同種族である、同じヒトに対する信頼を失うと
バーチャルなユートピアに逃げてしまいます。
現実の生活をどう生きるか、目の前の人に具体的な行動として何ができるのか。
そういうものから目をそらし、「夢物語」に自分の人生を捧げてしまうのですね。
目の前にある現実さえ、100万の言葉で飾りたてて、見えなくしてしまう。

それとは対極にある、慈悲。
「地獄の人をも、救うのが仏教」
と言った、K師のお言葉が、感慨深く思い出されます…



最後に、春樹さんのお言葉をお借りします。

 でも今回の地下鉄サリン事件の取材を通じて、わたしが経験したこのような閉塞感、責任回避の社会体質は、実のところ当時の帝国陸軍の体質とたいして変わっていないのだ。
 簡単に言ってしまえば、現場の鉄砲を持った兵隊が一番苦しみ、報われず、酷い目にあわされる、ということだ。後方にいる幕僚や参謀は一切その責任をとらない。彼らは面子を重んじ、敗北という事実を認めず、システム言語を駆使したレトリックで失策を糊塗する。前線において糊塗しがたい明確な敗退があれば、それは現場指揮官の職務責任として逐一厳しく処理される。多くの場合、詰め腹を切らされる。実相を明らかにするはずの情報は「軍機」という名目の元に公開されない。


自分の足と労力を使って、現場をリサーチし
「現実に何が起きたのか」を著作に残すお仕事をされた村上春樹さん。
また、できれば忘れてしまいたい出来事なのに、
丁寧にインタビューに答えて社会に問題提起をして下さった、60人あまりの皆さん。

頭が下がります。



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Author:散歩虫
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